Rest


「塔矢」
ちゅ、と軽い音を立ててアキラの頬に何がが触れてくる。

「ん…」

部屋の主が留守の間にぐっすりと眠り込んでしまっていたアキラは、ふわふわと揺れる意識を手元に手繰り寄せるべく、きゅっと整った眉を寄せた。

「塔矢、起きて。服を着替えないと皺になる」

どこか甘さを残す声はアキラの好きなトーンを持っている。
まだ幼さを残している、けれど変に大人びてしまったそれは、繰り返しアキラの名を呼んでいた。
声の促しに何とか応えようとはするのだが、ここ数日続いたハードワークに疲れきった体は思うように目覚めてはくれなかった。

「とうや」

そんな風に甘やかすような響きを含ませるからだ。
体よりも先に浮上し始めた思考で、アキラは随分と八つ当たり的な事を考えていた。

「―――…ぁ、だ。もう、少し、」
「その前に風邪ひいちゃうって」
笑いを含ませた声。アキラの好きな音。

柔らかな力で上体を浮かせられ、着たままだったワイシャツの袖を抜かれた。アキラの知らぬ間に前ボタンは全て外されていたらしい。

ひや、とここ数日で下がり始めた空気の冷たさが、シャツを剥がされた肌の上を滑り落ち、アキラは体を小さく震わせた。

「…さむい」
「あ、ゴメン」

アキラとしては声に出したつもりはなかったのだが、相手に謝られた所を見るだに、やはり声を発してしまっていたようだった。
えっと、と辺りを見回す気配を閉じた瞼裏で感じ、その後すぐに肌触りのいい毛布を掛けられた。
ふわりとした感触が気に入って、引っ越し祝いにとアキラ自身が贈ったものだ。

さらりと髪を撫でられ、アキラの頭の下に柔らかなクッションが差し込まれた。
その優しい気遣いに、浮上しかけていたアキラの意識は再度沈み始める。

「疲れてるくせに、家に帰らずにこっちに来るから」

でも嬉しい、そう独り言のように囁かれ、アキラは目を閉じたままうっすらと微笑んだ。

「キミの声―――」
「うん?」
「キミの声が…聞きたかった、んだ」

半分以上、意識を彼方へたゆたわせている為に、変に区切りながらもアキラはそう呟く。

「キミの声、…き、なんだ」

―――だからもっと名前を呼んで。

最後は音になっていなかったはずだった。
そのまま深く深く、温かな薄闇の中へと潜り込もうとする意識をもはや留めるつもりもない。

する、と毛布の端を持ち上げて、アキラの隣に誰かが滑り込んでくる気配。
相手も殆ど素肌なのか、剥き出しの腕がアキラの腕に触れた。
体を覆う毛布よりも、それは直接的な温もりを与えてくる。

「塔矢…」

アキラの体にゆっくりと重みが被さってき、額と瞼に少し濡れた感触のする温かなものが触れてきた。
そのまま少しずつ位置をずらし、アキラの体のそこかしこに触れてくる。

「寒くない?」

優しい接触に、体の中にある筈の骨まで溶かされるようだった。

「キミ、は…いつも、あたたかい、ね」

しんどう、そう形作る前に、薄い力で唇が覆われた。
ぬるい吐息がお互いの中に落とされて、アキラは今度こそ意識を手放していた。
 

 

END

***************************************************************************************  相変わらず、人様の投稿に助けられております、あなたの(誰のじゃ)ヨジョハン。年の瀬じゃないけれど、Sai待つ助け合い。
そして、半年ぶりの更新も、やはり他力本願…。

さて、今回スバラシ清貧さんを提供くださったのは、風見愁様でございます。
ありがとう、ありがとう、ありがとう!
つつましく、互いを温めあう二人。清貧カップルのまさに基本であります!二人を包む毛布はどんな豪華なお部屋よりもゴージャスな愛の空間なのでございます…。
アキラさんではありませんが、こちらの方が幸せすぎて意識を手放しそうな勢いでありますよ!

風見愁様のスバラシサイト、LAND様はコチラ!
 


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